ミシミシ、ギシギシ、ググググ、ドッシーン・・・ウォー!!パチパチパチ。
ヒノキの良い香りが漂う森林で、木が倒れた瞬間、歓声があがります。
6月9日の日曜日、都心で暮らす人たちに、山の管理の大切さを知っていただくため、間伐体験イベントを、多摩川源流の山梨県小菅村で開催しました。
参加者は都心で暮らす10代~60代までの15名。みなさん初めての間伐体験。
今回は、小菅村木こり倶楽部の方たちに指導をお願いしました。
準備体操の後、3グループに分かれ、各グループ1本のヒノキを伐採しました。倒す方向を決め、補助ロープを木にかけます。ロープを左右に持ち、波打つようにゆるめると、反動で木の上に上がっていくのですが、コツがいるので初めてでは中々うまくいきません。
ロープかけをしたら、交代でノコギリをひきます。徐々に傾きはじめたら、切っている人は安全な場所に退避し、他の人がロープを引きます。すると、ミシミシ、ギシギシ、ググググ・・・とゆっくり倒れはじめ、バッシーンという音が山に響き木が横たわります。倒れる瞬間、思わずウォー!と声が出て、無事に倒れたら自然と拍手が起こります。
枝を払い、4mに切り揃え、担いで一か所に集めたら作業は終了。達成感で自然と笑みが浮かびます。続いて木の皮剥ぎ体験。春から夏にかけ、スギやヒノキは水を沢山吸い上げるので、女性でも皮を引っ張ると面白いように簡単に皮が剥がれます。
お昼は、小菅村の山の幸をふんだんに使った多摩川源流弁当。木こり倶楽部さん特製の具だくさん味噌汁も振る舞われ、豪華なランチタイムとなりました。
午後は2グループに分かれ、間伐と皮剥ぎ作業を行ったところで、イベント終了1時間前になったので、汗を流すため温泉に入ることにして作業を終えました。
戦後間もないころは、銀行にお金を預けるより儲かると言われたスギやヒノキの人工林。畑でダイコンやニンジンを育てるのと同様、たくさん植えて成長を競争させ、育ち具合をみながら適度に間伐(間引き)することで、健全で太くて真っ直ぐな木が育ちます。ところが、70年代以降、安い外国産材が入ってくるようになり、また、2×4や軽量鉄骨住宅などの流行で、日本の木材価格は低迷してしまいました。間伐材も、昔は建築現場の足場や電信柱に使われましたが、今では需要がなく、伐採しても採算が合わないので山に放置される「切り捨て間伐」が主流となっています。
多くの人が日本の林業に目を向け、少しでも日本の木材を使う暮らしが増えれば、山の管理が進み、草が生い茂る山に戻り、生物多様性の環境も復元されていくでしょう。そして保水力も高まり、洪水の被害も減少されます。何よりも山の雇用が生まれることで地域が活性化するので過疎化を防ぐことができ、山里で培われてきた人と自然が関わって生きていく知恵や文化が継承されていきます。
晴天に恵まれ、山を渡る爽やかな風がそよぐなか、フィトンチッドが充満するヒノキの森での間伐体験作業。心と身体の森林浴を楽しんだ一日でした。