暮らしながら考えよう 日本の森林(やま)、未来へつなげる暮らし方 シンポジウム2014年06月19日


―再生可能エネルギー「木質バイオマス」の活用を都市の住民で考えるシンポジウム―

薪やペレットなど、木質バイオマスの利用を都市で広げるため、

多くの人と考えるシンポジウムを6月15日の日曜日、

東京農業大学世田谷キャンパスで開催しました。

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木質バイオマスについてのシンポジウムは、山間地域で開催されることが多く、

都会で暮らす人にはなかなか伝わってきません。しかし、都市で利用者を広げる

ことこそ、間伐促進、広葉樹の更新、過疎化など、日本の森林・林業が抱える諸々

の課題を解決する有効な手段であり、多くの都市住民に知って欲しいとの願いから、

87万人が暮らす、世田谷区での開催にこだわり、今回のシンポを企画しました。

また、パネラーも、薪を生産する者、薪の流通に取組む者、薪ストーブを設置販売

する者、ペレットストーブ付きの賃貸住宅を展開する業者、都市で薪ストーブを利用

したエコライフを実践する者、都市と森林を結び、森林保全活動を行う者といった、

山から都市まで、「木質バイオマス」を「つなぐ」ことを意識した人選とし、基調講演、

パネルディスカッション、グループディスカッションという内容で進行しました。

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まずは、東京農業大学教授で、森林政策を研究されている宮林茂之先生から、

「持続可能な森林(やま)を22世紀に渡す」というタイトルでの基調講演を頂きました。

戦後拡大造林政策により、日本は世界有数の森林国となった現在、森林面積は変わ

らないものの、森林体積が増え続けており、これからは伐る時代に突入しているという

話から始まり、少子高齢化の日本の人口同様、森林も人工林の問題だけでなく、里山

の雑木林も大きく育った影響によるナラ枯れ病の蔓延、里山の荒廃、鳥獣被害、不在

山主、境界の未確定など、問題が山積みである現状の話から、それを解決すべくは、

100年先を見据え、国をあげ、国民が日常的に木を使う暮らしにシフトすることが重要で、

しいては国土を守ることにつながるということを分かりやすくご講演いただきました。

本物を生産し、本物を使う、それを流域単位で行うことが大切だという話がとても印象

的でした。

 

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続いてのパネルディスカッションでは、世田谷で薪ストーブやOMソーラー暖房などを

取り入れ、CO2排出を極力抑えたエコハウスを建てて暮らす、元環境省事務次官で慶応

義塾大学教授の小林光氏、埼玉県志木市でペレット付き集合住宅を建て、賃貸業を行っ

ている㈱ミヤケン取締役の宮原元美氏、埼玉県東松山市で薪ストーブ設置販売業を営む、

アリュメール代表の吉田一之氏、都市住民を募り、全国各地で森林保全活動を行っている

NPO法人地球と未来の環境基金・会長の高橋広明氏、そして、薪まきネット「薪バンク」プロ

ジェクトを推進する、当団体の副代表・小出仁志が登壇。宮林先生のコーディネートにより、

それぞれの立場から、活動や取り組みなどを紹介しつつ、現状の課題や都市での活用を

広げるためのアイディアなどを話し合いました。会場からも、都市の防災的な側面からの

木質バイオマス利用の促進や、都市と山をつなげる仕組みづくりについてなど、たくさんの

意見やアイディアもいただき、都市で暮らす私たちこそ、日本の森林・林業を救う役割を担っ

ていることを再認識しあいました。

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休憩をはさみ、最後はパネラーと来場者が3つのテーマに分かれ、議論を

深めるグループディスカッションを行いました。グループAは「都市でのエコライフ」

とし、地球と未来の環境基金の美濃部真光氏をコーディネーターに、小林氏と

宮原氏が担当、グループBは「薪ストーブの魅力」とし、焚火部を主宰する

鍋屋直明氏をコーディネーターに、吉田氏が担当、そしてグループCは、

「都市と森林をむすぶ」をテーマに、当団体の小出がコーディネーターで、高橋氏

と関口氏が担当しました。それぞれのグループでは、パネルディスカッションでは

詳しく聞けなかった質問や、意見、アイディアなど、活発な議論が交わされました。

最後はそれぞれのコーディネーターから話し合われた内容を、会場の皆さんに

報告し、それを受け、宮林先生から都市で木質バイオマスの利用拡大を進める

ためには、薪ストーブの良さを感覚的にではなく、ダイオキシンなどの環境面や

経済性など、諸々の不安や疑問を科学的に明らかにしていくとともに、都市で

活用を広げるための運動を様々な機関を巻き込んで展開していくこと、

森林ボランティアの若返りを図り、次の世代に引き継いでいくための森林保全

活動に携わる、新たな都市住民を増やしていくことが大切であると、今回の

シンポジウムの総括を頂き終了となりました。

 

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終了後は、会場を学内のレストラン「すずしろ」に移しての交流会。小林光氏の

乾杯のご発声により、乾いた喉を潤しました。登壇者や参加者同士による意見交換や

歓談のなかに、新たな出会いや繋がりが出来た様子で、あっという間に時間が過ぎ、

終了予定を1時間オーバーしてしまいました。

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梅雨の合間の青空が広がる暑い日ですたが、遠くは秋田県からも駆けつけて

頂き、全体で100名ほどの方が膝を交え、真剣に日本の森林・林業について考えた、

とても熱くて中身の濃いシンポジウムとなりました。

とても小さな私たちの団体による、初めてのシンポジウム開催であったため、

至らぬ点も多くありましたが、宮林先生のご協力のもと、共催団体のNPO法人

地球と未来の環境基金様をはじめ、協賛を頂いた㈱YKイノアス様、㈱ミヤケン様、

そして貴重な休日を返上して関わっていただいた多くのボランティアスタッフの

皆様に支えられ、無事に開催することができました。この場をお借りしてお礼申し

上げます。

今回のシンポジウムから、私たちの団体としては、今後何をすべきか考え、行動し、

そして成果を出していきたいと思います。

なお、シンポジウムの詳細については、後日報告書としてまとめ、改めてご報告させ

ていただきます。皆さん、ありがとうございました。